第六回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
優秀作品および入選作品発表

第六回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール
優秀作品および入選作品

最優秀賞

店員と
世間話で
声見知り

  • 名前 宮城翔 様
  • 部門 見えにくさを感じている方部門(ブラインド)
  • 解説 私は買い物をする時、援助依頼をします。同じ店を訪れるたびに、お互いが名前を覚え、声見知りになります。こうして視覚障害者が、買い物しやすい社会になっていってほしいと思います。
  • 講評 作者と店員との関係が、「声見知り」だけで読者に伝わります。この句に登場するお二人は「世間話」をしています。気楽な間柄で交わされるたわいもない話です。コロナ禍を経て、生活の様々な場面が機械化、デジタル化され、会話や触れ合いが減る昨今ですが、人との何でもないやり取りの大切さ、温かさを思います。(八木 健)

見えにくさを感じている方部門賞

見えずとも
君の嘘なら
お見通し

  • 名前 さくらもち 様
  • 部門 見えにくさを感じている方部門(ロービジョン)
  • 解説 小学生の息子が、小言を言われないよう叱られないようにと、あれこれごまかそうとしていますが、大体これは嘘だなと、声色や口ぶりから母のカンが働きます。
  • 講評 「嘘をついてもすぐバレる」親しい関係だと読者に気付かせて楽しい句です。この句に登場するお二人は、お母さんと小学生の息子さんとのことです。いかによく息子さんを見ておられるか、お母さんの愛情を感じますね。二人の笑い声が聞こえてくる一句。(八木 健)

メディカル・トレーナー部門賞

白内障
術後林檎が
美しい

  • 名前 千流 様
  • 部門 メディカル・トレーナー部門(医師)
  • 解説 私の受けた手術の実感です
  • 講評 白内障の手術をした後の見え方の素晴らしさを語っておられますね。自然の色がこんなにも輝いているのかと、林檎を初めて見たかのように感動されたのです。「林檎」は、身の回りに何気なくある物の象徴でもあります。(八木 健)

サポーター部門賞

無意識が
点字ブロック
塞いでる

  • 名前 ふみあと70代 様
  • 部門 サポーター部門(その他一般の方)
  • 解説 自分は死ぬまで健常者だと思ってる人が多すぎるのではないか?
  • 講評 悪意、故意ではないのですが、点字ブロックの上に物が置かれていたり、人が立ち話をしていることがあります。人を責めるのではなく、「無意識」「無関心」に気をつけていただきたいのだという表現で、句に説得力が出ました。(八木 健)

NEXT VISION賞

こっちだよ
その一言が
思いやり

  • 名前 お話大好き 様
  • 部門 サポーター部門(職場の方)
  • 解説 職場での移動や通勤の際に、目的とする方向に一言声掛けするだけでも、とても助かるとの声を頂きました。その一言の大切さを川柳にしました。
  • 講評 日常生活の中でさりげない一言が、心の通った思いやりとなることを表した川柳です。簡潔ながらも力強い支援のメッセージが、視覚障害者にとって精神的なサポートや共感となります。それは単なる道案内ではなく、相手を思いやる心、状況を理解しようとする姿勢を示しています。公益社団法人NEXT VISIONは、情報障害をなくし、誰もが互いに支え合い、理解し合う社会を目指し、すべての人が自分らしく生きられる明るい未来の実現を目指しています。(NEXT VISION)

日本眼科医会賞

白杖が
視野に入らぬ
スマホ族

  • 名前 リンゴ酢 様
  • 部門 見えにくさを感じている方部門(ロービジョン)
  • 解説 ながらスマホで歩いている人には、白杖を見てもらえないことが多いのが、いつも気がかりです。
  • 講評 スマホは便利なので晴眼者、ロービジョン者を問わず、誰もが使用しています。スマホを見ながら歩いている人は周囲がわからず、危険です。ロービジョンを示すシンボルである白杖も目に入らず、衝突する危険があります。ロービジョン者は白杖を使用していれば、他の人は避けてくれると考えているので、この常識が通じなくなります。戒めの一句として選定しました。(日本眼科医会)

総評

八木健審査委員長

 今年度は、ご協力くださる団体様が40以上となり、多くの素晴らしい作品が集まりました。

 さらに、これまで最優秀賞は、ほとんどが60代以上の方ばかりでしたが、今回は、10代の方が初めて受賞されました。回を重ねる毎に10代の方からの応募も増える傾向にはあります。しかし、全体の中ではまだまだ少ない中で、今回の受賞はとても大きな意義があると思います。

 今回の応募作品を拝見して、多くの方が川柳に詠まれていた言葉に気付きました。「QRコード」「人工知能」「アプリ」などの電子機器に関連する言葉です。中でも「セルフレジ」「タッチパネル」は、昨年に続いて特に多く詠まれていました。いずれも視覚優位の機能のため、使い辛さを嘆いておられました。

 その他にも不便や困ったことを率直に書いてくださった作品として、「問い合わせ窓口」の電話対応が激減したことを詠まれたものがありました。確かにこの数年で、多くの企業やメーカーが、問い合わせの窓口から電話を廃止し、メールやチャットに切り替えていますね。このメールやチャットの使い辛さは、見えにくさが無い方でも、多くの方が痛感しているところです。

 また、音の出る信号機が夜8時以降翌朝7時半頃まで鳴らないことがほとんどだということや、文字の書体によって見えやすさが違うことなども、応募作品や作者のコメントによって知りました。歩きながらスマホを見ている人や、点字ブロックの妨害も、まだまだ多いのだということも分かりました。

 入選作品のみならず、応募作品の一つ一つに学ぶことのなんと多いことでしょう。様々な事を教わり気付く機会を得て、このコンテストの選者をさせていただいて良かったと今回もつくづく思いました。そして、誰もが安心安全に暮らせる社会について、皆で考えていければと思います。